緊急ミーハー観劇レポート 新国立劇場  ヴァイクル演出 
「ニュルンベルクのマイスタージンガー」

*ネタバレ有です。ご注意ください。

   
指揮 シュテファン・アントン・レック
演出 ベルント・ヴァイクル
管弦楽 東京フィルハーモニー交響楽団
合唱 新国立劇場合唱団
【キャスト】
ザックス ペーター・ウェーバー
ベックメッサー マーティン・ガントナー
ヴァルター リチャード・ブルナー
ダーヴィット 吉田浩之
エーファ アニヤ・ハルテロス
マグダレーネ 小山由美
ポーグナー ハンス・チャマー
フォーゲルゲザング 大野光彦
ナハティガル 峰 茂樹
コートナー 米谷毅彦
ツォルン 成田勝美
アイスリンガー 望月哲也
モーザー 高橋 淳
オルテル 長谷川 顯
シュヴァルツ 晴 雅彦
フォルツ 大澤 建
夜警 志村文彦



会社休んで行きました(笑)。
前売り券は買っていませんでしたが、平日とはいっても初日ですし、当日券がまだあったら見ようかな、駄目だったら他の日のチケット買って帰ろうと思って行ったのですが、運良く当日券があったので早速購入。

ワーグナー先生の作品のなかでも一番好きな作品ですし、あのヴァイクル氏の演出ですし、SS席23,100円也を思い切って奮発。

←ご承知のとおりバイロイト音楽祭のマイスター。ザックス親方はヴァイクル氏。この映像大好きです。


【新国立劇場】
オペラ劇場に入ったのは初めてでした。
ベルリン国立歌劇場を少々大きくしたような感じだな〜というのが第一印象でした。
音響は、私めがきいた日本の演奏会場のなかでは一番いいんじゃないかと思いました。
というのは、この作品の重厚で壮大な前奏曲、東京フィルの演奏では薄っぺらくなるのではないかと予想しておりました。
日本のオケ好きの方には申し訳ないのですが、私めは日本のオケの、ベートーヴェン、ブラームス、ワーグナーの演奏はいまいち(メリハリがない、生ぬるい、薄っぺらい)の観がどうしてもぬぐえないので、あまりすきではありません。

が、新国ではそれほどオケの音が気になりませんでした。この劇場の特性なのでしょうか、日本のオケの弱点がカバーされている、という言い方はうがちすぎかもしれませんが、そこまで考えて作られているのかなとちらっと思いました。




【会場内】

初日だからでしょうか、見かけた著名人→大町陽一郎氏、若杉弘氏
(こういう人たちって、ただで入れるのでしょうか??)
外国の方もたくさん・・・・1階のロビーではドイツ語が飛び交っておりまして、どこの国にいるのかわからなくなるような錯覚が(^_^;
ワタシ、来る場所間違えましたか〜???
ちゃんとスーツ着て来るんだったと後悔しきり。新国って、ちとレベルが高いんですね・・・。




【以下は感想です。ネタバレ注意!】


演出は、シンプルかつオードソックスで、隅々にまで神経が行き届いたような空気があり、好感がもてました。個人的に、マイスタージンガーの16世紀のニュルンベルクという設定は絶対だと思いますし、変に斬新演出をしないほうがいいような気がしているので、この点でもよかったです♪

さらに、

エーファ役のハルテロスさんが、すらっとしていて美しかった!歌もいいです、ハイ。ヴァルター役のブルナー氏より背が高いのはご愛敬♪
実は、昨年の東京シティフィル「ローエングリン」で小山由美さん@オルトルートの歌声に惚れ込んでしまって(完全にエルザを食っていたと思います)、今回も小山さんがマグダレーネを歌うというので、期待していましたが、やはり見事!素敵でした〜。吉田さん@ダーヴィットも役柄がきちんと出ていてふたりのコンビも楽しめました。

特筆は、ベックメッサーさん。この作品を左右するのは、ベックメッサー役の善し悪しにかかってくるんじゃないかと最近思っているのですが、ガントナー氏、芸達者ですね〜。それとも欧米ではこのレベルが普通なのでしょうか、徹頭徹尾、笑いを誘うおちょくられる小悪党を演じてくれました。

だけど、必ず白い脚立をもって現れるのはなぜ〜?・・・いえ、似合ってますし(笑)おもしろいからいいんですが。

第一幕はラストの親方とベックメッサーの決めポーズ(というんでしょうか?)対比の演技が印象深かったです

[第二幕]
にわとこのモノローグ・・・・はいいんですが、その「にわとこ」がおおきな植木鉢にはいっていました。
エーファが「あっちに隠れましょう」とヴァルターにいった後で、この「にわとこ」植木鉢をヴァルターが引きずっていったのには思わず笑いました。で、ふたりはにわとこ植木鉢の影に隠れるという(^.^)。
その後、例のごとくベックメッサー氏登場で、持ってきた脚立の上に乗っかって歌をうたう書記さん(笑)いいです!

あとはどたばた大騒ぎになだれ込みですが、「水をかけよう」と女たちが叫ぶところで大きな枕がどかどか投げられていたのも楽しめました。
ひとつ残念なのが、オケ。ここはもっとフォルテシモをきかせてほしかった・・・・日本のオケの弱点が露呈された唯一のシーンだと・・・・たぶん・・・・

ですが、次にくる「11時ですよ〜」の志村文彦さん@夜警がいい声で・・・・はっとしました。この方の歌、機会があったら聴いてみたいです。ハイ。


[第三幕]・・・・感激しっぱなしでした。

まず、幕があいた途端、
ザックス親方の部屋の壁に掛かっている正面の2枚の大きな肖像画
に思わず注目。
あまり視力がよくないので、断定はできないのですけれども、
一枚はワーグナー先生
一枚は本物のハンス・ザックス親方
(本物、という言い方も変ですが(^_^;)
の肖像画のように見えました。

だとすると、ヴァイクルさんを尊敬せずにはいられません。
この作品の作曲者とそしてモデルになった実在のザックス親方に対する愛情というか深い畏敬の気持が込められている演出のように思えて、感動しました。

次にエーファと親方の会話の場面(第4場)。演技のうまさによるものか演出の効果か、エーファの親方に対する感情が細かに表現されていて胸にせまりました。

つづいて歌合戦。徒弟たちの踊りの場面で鮮やかなリボンを使った演出がよかったです(他にもこういった演出があるかもしれませんが、私めはそれほど映像を見たことがないのでお見逃しを(^_^;)。

ファイナルはうなることしきりでした。ヴァルターの歌が皆に認められて、晴れて大円団となる場面でのベックメッサーは、Nein!と大書きした黒板を掲げて前の方に現れたはいいものの、すぐまた追い払われるという演出になっていて、最後まで一貫した描かれ方になっていました。
彼がザックス親方と握手して終わったりするような演出もみたことがありますが、なかなか意見の分かれるところかもしれません。
最後にザックス親方が、頭にのせられた月桂冠を自ら手にとって、舞台後ろに掲げられた「自然と芸術」とかかれた横断幕のような布に向かって、冠を捧げるようなポーズをして終幕となったのが非常に印象的でした。
ザックス親方の最後の台詞は「ドイツの芸術を大切に」ということ(だと思う)ので、なるほど〜と納得してしまいました。




【観劇終了 22:00】

開演が16:00で終演が22:00・・・・30分と50分の休憩をはさんで延々6時間。
ワーグナー作品が「長い」と言われるのもよくわかりましたが、十分に楽しめました(^.^)
合唱もうまかったですし、歌手陣もなかなかきき応えがありました。
やっぱり生演奏を聴くなら最低限このくらいのレベルで聴きたいですね。奮発した甲斐がありました。

で、奮発したために思わぬことが・・・・
席に座って開演を待っていたところ、横から、蝶ネクタイをしめた恰幅のいい外人さんがやってきました。
どうやら私めが座っている同じ列に席をとってあるらしく、たどたどしい日本語で「すみません」といいながら手をあげる仕草をするので、「どうぞどうぞ」と言いながらその外人さんの顔を見たところ・・・・

嘘。
まさか。
でも、よく似てるし。

そんなことを頭のなかで自問自答しながら、そこで凍り付くこと数秒。
その間、関係者らしき人が、彼にむかって「コングラチュレーション!」とか言っていましたし、サインをもらいにきていた人もちらほら。

・・・・私めの目の錯覚ではございませんでした。

(意を決して)私め「Mr.Weikl?」
外人さん「Oh,Yes」(にっこり)
私め「サ、サイン、ビッテ!」(←もう、めちゃくちゃ(^_^;))
外人さん「oh,yeah」


本物でした。
名ワーグナーバリトン、シュタイン盤マイスターのザックス親方、バーンスタイン盤トリスタンのクルヴェナル、ハイティンク盤タンホイザーのヴォルフラム・・・・ワーグナー好きにとっては神にも匹敵する彼は、このたびの新国マイスターの演出を手がけた、
ベルント・ヴァイクル氏その人でした。

→もらったサインでございます(^^ゞ。


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